バンクーバー日本人留学生の事件に思うこと

海外に留学している方、これからされる方、
特に女性のみなさんへ

今回の事件、被害に遭われた日本人留学生のNさん行方不明発覚の当初から
情報提供をお願いする手伝いをしていました。
街中でビラを配ったり、オンラインで呼びかけたりしました。

そんな中、カナダに滞在する日本人留学生の過ごし方に関する
様々な情報にたくさん触れることになりました。

そして、事件とは直接の関係がないかもしれませんが
留学中の日本人女性たちの心配な行動を知ることになりました。

かなり安易に出会ったばかりの男性と
二人きりの時間を持っている人がいるということを知りました。

出会い系アプリを利用して現地男性と出会っている留学生も
決して珍しくないと知りました。

これは、事件被害者のNさんが、
出会いアプリを利用していたと言っているわけではないです。
その情報は聞いていません。どうか誤解のないようお願いします。

捜索活動で知った情報として、
カナダに留学中の日本人女性の方の中に、
そういう人が少なからずいるようだという、一般的な話です。


今回の事件に対するカナダ現地の方々の反応も、
Don't trust a stranger. というコメントが多数みられます。

「見ず知らずの人を信用するな。」

知らない人について行ったらだめですよって。
そんなの日本でも幼稚園に行ってる時から言われてますよね。

わかってます。自分は大丈夫、そう思いますか?
でもそれ、本当ですか?

よく考えてください。

その大丈夫は、
日本で日本語を話している時の判断じゃないですか?
英語で話している自分にも同じことが言えますか?

英語を勉強中の多くの留学生にとって、きっと違うと思います。

知っていてください。

あなたがこの英語圏で英語を話しているとき、
あなたの判断力、判断基準は
日本語を話している時のそれとは違ってくるものです。

これは、第二外国語として英語を話しながら
16年カナダで過ごしてきているわたしが
自分の経験からつねづね思っていることでもあるんです。

英語でうまくコミュニケーションしなくては。
会話についていかなくちゃ。
聞きのがさないようにしなくちゃ。
理解できてないことを悟られたくない。
できないって下に見られたくない。

背伸びしたくなることがあるんです、どうしても。
上手くやれてる自分になりたいんです。

日本語だったら自分はもっとイケてるんだけどって思うと、
そのギャップに苦しんだりすることがあるもんです。
また安心を取り戻したい、英語でもそれに近づきたいと思うのです。

性格のタイプにもよると思いますが、特に女性にとって、
コミュニケーションは自分の存在を示す大きな部分をしめてます。

だから、英語ができないためにそれに支障がでると
自分の価値が下がったような焦りの感情がでてきます。

その劣等感が「無意識」にあなたの判断力、判断基準を操作してます。
バイアスがかかってるんです。かなり無意識に。

その劣等感を補おうとして、いつもとは違う判断をしているんです。
そういうことがあるんです。

それを知っていてください。

そしてその無意識のバイアスはやっかいなことに、

自分に理解しやすいことを話してくれる人
自分が知ってることを話させてくれる人

そんな人を好意的に受け取るようにさせます。

さらに、

褒めたりして自分を認めてくれる人を
過剰に好意的に受け取るようにさせます。

極め付け、

そんな自分を頼ってくれる人がいたら、
もう嬉しくなっちゃって「よし、何でも助けるよ!」
ってさせてしまうことがあるんです。

道を聞かれて知ってる場所だったらやけに張り切って
その場所まで案内までするとか、

日本語教えてって言われたら、
Of course!!なんてすぐに了承してしまうとか、

なにかに誘われたら、なんか断れなくなっちゃうとか。

そんなこと、身に覚えないですか?
それが無意識バイアスの仕業なんです。

自分は変なやつにはひっかからない、
ちゃんと気づけるっていうあなたのいつもの判断力、判断基準は
日本語を話しているときのもの。

英語を話しているときは正しく操作してない、
それをどうか知っていてください。自覚していてください。

わたしはある程度は流暢に英語を話すようになったけど
そうなった今でも英語を話す自分に余裕があるとは思ってません。

特に知り合ったばかりの人とは背伸びして話してます。
良い印象を持ってもらいたいと思う場面ならなおさらです。

文化の違いもあり、NOと言わなきゃいけないときは、
タイミングと言い方を見つけるのに苦心します。
断るくらいだったらもう引き受けてもいいか、
せっかくわたしに頼ってくれたのだし・・・みたいな。

グループで話すのは今でも難しいです。
割って入っていくだけでなく、同時に複数発言があると
とてもじゃないけど会話についていけない・・・。

だから、できれば会話は1対1でしたいですよ。
じゃないと本当に何言ってるかわかんないもの。
それ、すっごくわかります。

それがカナダ16年生の今のわたしです。

けどね、

いくら1対1の方が話しやすくても、
いくらその方が楽しくて、心地よくても
いくらその方が英語の勉強になるのだとしても

そしてもしかしたら、

英語を話す人と仲良くなれる入口を探していたとしても

出会ったばかりの人と
周りに人のいない場所で二人きりになっちゃダメです。

(家、車、夜、トレイルなど、他の人と隔離された場所)

そして母国語じゃない出会い系アプリはやっぱりダメです。
いつもの判断ができない英語環境では危険が大きすぎます。

人は普通、いきなり1対1の状況で出会うことは少ないですよね。
最初はクラスメイトだったり同僚だったり友だちの友だちだったり。

声をかけてきてくれた人の誘いに早々に乗っかったり
出会い系アプリを通じて最初から二人きりで会うというのは
その人をちゃんと知る機会をうばってしまいます。

その人をちゃんと知る
自分と気が合いそうな人かどうか知るっていうのは
その人の自分への態度っていうよりは

その人が周りの人とどう関わっているかというのを見て
きちんと判断できたりしないですか?

人から信頼されたり好かれているところを見ながら
安心して信頼したり、好きになったりしてませんか?

逆に周りの人と良好な関係が築けていない人を好きになったりしますか?

そういうのを見る機会って、出会いのプロセスでとても大事なことです。
すっとばしちゃダメですよ。

下心があってあなたにだけ取り繕った態度をとるなんて
意外と簡単なことです。

日本人女性がイージーだと言ってる人は
日本人女性を信頼させる方法を知っているからそう言うのでしょう。

最初から1対1っていうのは、
やっぱりその人の本当の姿が見えてない可能性大きいですよ。

限りある留学期間、
のんびり構えずたくさん出会いたいかもしれないけど

それで出会い系アプリなんかでお手軽に出会っちゃダメ。
出会ってすぐに二人でどこかに行く誘いに乗るのもダメ。

さっき話した「無意識バイアス」がかかった壊れた判断力で
飛び込んでいくようなものじゃないと思います。

きちんとオーガナイズされたランゲージエクスチェンジや
ボランティアグループに参加したり、
他にも出会いを広げる方法いっぱいあるじゃないですか。

日本にいるときのあなたは、
楽しいお話ができたり、気配りができたり、人に頼られたり、
大勢の会話の中心にいられる人だったかもしれないです。

英語でそれが発揮できないのはとてもストレスですよね。
1対1のシチュエーションの方がラクチンに思えるでしょう。

でも大丈夫。

ちゃんとあなたを見て慕ってくれる人が英語圏でもいます。
その出会いは一生の宝物です。
留学に来て良かったって思わせてくれます。
それは泣くほどうれしいことです。

そんな出会いを見つけることに大切な時間を使ってほしいです。

その出会いのためには、等身大の自分でいることです。
英語は少しずつしか上達しないかもしれません。
それでも背伸びしすぎず、
少しずつ出会いの輪を広げていったらいいと思います。

そして英語に四苦八苦しながらでも
等身大のあなたが、この人いいなって思ったら
きっとその人はあなたにとって大切な存在だと思います。


今回のような凶悪な事件は、
カナダの人たちにもショッキングなもの。

バンクーバーはやっぱり綺麗で素敵な街です。
自然と街が溶け込み、様々な文化の人が行きかう街です。
そんな様子はカナダの寛容さを象徴するかのようです。

それをぜひ知って欲しいと思います。

でも、ここまで最悪の事態にならずとも
日本人留学生の弱点を知った心無い人たちの悪意ある行動によって
身体や心を傷つけられる人がいることも知ってください。

でもそれって、バンクーバーだからではなく
言葉の通じない場所ではどこでも起こりうることなのです。

だから世界中どこでも、留学、海外旅行に行くなら
周りの環境が違うだけでなく
自分自身がいつもと違うことを知っていてください。

そしたら、自分を守ることができます。

悲劇が繰り返されないよう、心からそう思います。

最後に、

わたしはNさんを直接は知りませんでした。
彼女を探すため、自分に協力できることがあったので
彼女の無事を祈りながら情報提供の呼びかけを続けていました。

彼女が無事に戻ったら会いたかったです。
ここに書いたようなことを伝えたいと思っていました。

彼女はとてもがんばり屋さんだったと聞いています。
とても行動的だったと聞いています。
英語もそこそこ出来て、さらに上を目指していたそうです。

そんな彼女が、極悪な人間のターゲットにされ
理由はわかりませんが、その人と行動を共にして、
つけ入られる隙を作ってしまいました。

前科があり、何十回も警察に通報されているような人です。
警察発表では、決まった住所もなかったようで
逮捕時もバンクーバーから遠く離れた場所でテントを張っていたそうです。

そんな人ですよ?
日本語で会話をしていたら、どこかでこの人の言動はおかしい、
そう気づけたのではないでしょうか。

その不自然さに気づけないのは、

英語をきちんと話そうとか、
自分をよくわかってもらおうとか、
この人が困っているから助けてあげようとか、

何か違うことに意識を奪われ
通常の判断力、判断基準を失っていたからではないでしょうか?

彼女が無防備だとか、甘いとか、軽率とか
そういう人であったと言っているのではないんです。

そんな人でなくても、
がんばってると、そしてがんばっているからこそ
知らずとそうなることもあるんです。
しかも無意識で。

だから気を付けるとかじゃなくて、
そのような状況から有無を言わさず離れなくちゃダメなんです。
そこにいちゃダメなんです。

出会ったばかりの人と
周りに人のいない場所で二人きりになっちゃダメなんです。
これは日本から外に出たら常識だと思わなくちゃ。

それ知っていてくれたら、
命を落とさないで済んだのではないかと考えずにはいられません。

まだ若く、素敵に輝いていた女性が
夢半ばでこんなひどい犯罪に巻き込まれてしまうなんて、
どんなにか、どんなにか悔しいことでしょう。

彼女を知らないカナダの人からも、
彼女の死を悼む声が方々からたくさんあがっています。
いつかご家族の元にも届き、ほんの少しでも心の癒しになりますよう。

ご冥福を心からお祈りしています。